もし私がアメリカ人だったら・・・?
そんな想像をしたことはありませんか?
当然ですが私たち音楽ファンは洋楽をきくときは歌詞やその訳を見ながらその歌詞を理解します。
でももし私がアメリカ人だったらどんな感覚でその音楽を聴くんだろう?
洋楽派の方はきっと想像したことがあるはず。
今回はアメリカで生まれた音楽である「ブルース」を初めて日本語で歌った憂歌団(ゆうかだん)の1stアルバムをご紹介します。
そのブルースは母国語でブルースを味わってみたい!と渇望していた人々の心の中に染み込んで行きました。
このアルバムについて
このアルバム「憂歌団」は1975年にSHOW BOATによってリリースされました。
憂歌団は1970年に大阪でボーカルの木村充揮(あつき)とギターの内田勘太郎の2人によって結成されました。
ここにベースの花岡献治とドラムの島田和夫が加わり4人体制のバンドになりました。
このバンドの魅力はなんといっても「天使のダミ声」として有名な木村充揮のボーカル!
力強く決して綺麗とは言えないボーカル。
でも何故かそれがとても心地良くて優しい。
そんなボーカルを日本語のブルースとして味わえる!
何回聴いても心に染み込む名盤です。
楽曲レビュー
1.嫌んなった
憂歌団の代表曲です。
印象的なギターのイントロから「嫌んなった〜!」
もうたまりませんね。
絶望しているようで前を向こうとする、そんなポジティブなエネルギーを感じられる曲です。
2.シカゴ・バウンド
ポジティブなエネルギーを感じたあとに一気に奈落の底へ。
楽しいブルースも多いですが、やはりブルースはやり切れない心の叫び。
辛い状況に耐え切れず、ピストルを買おうとする。
しかし仕事がないのでピストルが買えない。
これから先は真っ暗闇。
そんな曲の内容です・・・。(救いようがない)
イントロのタンパ・レッド調のスライドギターによるイントロが印象的です。
3.ちょいとそこ行くネエチャン
ユーモアにあふれた曲。
この人!!と射止めた彼女にプロポーズ!
成功!!!
でも時の流れは残酷で・・・。
美しい妻はバ○ァに・・・。
ブルースはこんな感じで自分の奥さんへの愚痴を垂れ流す曲も多数あります。
愚痴といっても湿度は低くてクスっと笑える感じなので楽しくなります。
4.キイ・トゥー・ザ・ハイウェイ
原曲はジャズ・ジラムのブルースのスタンダードナンバーです。
こちらは原曲通りに英語で歌っています。
ちょっとおどけた感じのギターが楽しい。
5.ドツボ節
原曲はブルースのスタンダードであるNobody Knows When You Down and outです。
クラプトンのアンプラグドのカバーでも有名ですね。
このドツボ節はこの曲の意訳ナンバーです。
ひとときはお金を儲けて取り巻きもたくさんいた。
しかし一度転落すると誰も見て見ぬ振り。
そんな転落劇を描いた曲です。
新社会人は聴いておくと心の予防接種になるかも・・・?
6.シャッ・シャッ・シャ・ビ・ダ
スキャットナンバー。
とみせかけてのパチンコナンバーです笑
(憂歌団ではパチンコを歌った曲が多数あります笑)
7.おそうじオバチャン
こちらも憂歌団の代表曲ですね。
シングル発売から1週間で曲の内容が差別的として放送禁止になりました笑
ですが曲の内容を聴くと差別的というより、女性清掃員の心の悲哀を歌っているだけなんだけどなぁ・・・。
この曲はなんといっても島田さんのフレッドビロウのような踊り出したくなるような軽快なリズムが聞きどころです!
こんな私にも夢はある〜♪
8.ひとり暮し
あんなに俺を愛した女が 何も言わずに出て行った
そんな歌詞で始まるのがこの曲。(救いどころないなぁ)
お前の代わりを見つけ出そうと 一人でこの街をさまよい歩く
失恋に対しては女よりも男のほうが未練たらたらなのがよく分かります。
内田勘太郎のスライドのギターソロがより哀愁を深くします。
9.カインド・ハーテッド・ウーマン
ご存知、ロバートジョンソンの超有名曲。
原曲通り英語で歌われています。
原曲とは全く違うアレンジで新鮮に聴けます。
10.ジェリー・ロール・ベイカー・ブルース
このアルバムの中で一番のしっとりナンバー?
11.はんか街のはんぱ女
我が道をいく女性の歌。
人の目を気にしてなんだか自分が惨めな気持ちになったときに聞きたくなる曲です。
原曲はサニーボーイウィリアムソンのMorning Little School Sirlです。
12.グッバイ・ベイビー
このアルバムを締めくくるのがこの曲。
スライドギターの最後のこの曲の余韻がそのままこのアルバムの余韻として感じられます。
どうすれば聴ける?
こちらの憂歌団の1stはどうすれば聴けるのでしょうか?
①サブスク
Amazon Music、Spotifyで配信されていますので、こちらのサービスを利用するのが一番お手軽だと思います。
②CD
CDもアマゾンで購入することができます。
(残念ながら新品での入手はできないのでマーケットプレイスを使うことになりますが・・・)
③レコード
現在は廃盤になっていますが中古レコード店にいけば入手可能です。
たいていどのレコード屋さんでも見かけますので入手難易度は低いと思います。
まとめ:憂歌団は母国語でブルースを味わう贅沢をくれた
ふとしたときに憂歌団の曲を口ずさんでいる自分がいます。
口ずさめるということはその曲と心の距離が近いということです。
遠く離れたアメリカから生まれたブルースを母国語でより近い距離で味わえる。
憂歌団が私に与えてくれたもの。
それは母国語でブルースを味わえる贅沢さです。
この盤は恐らく死ぬまで聴き続けることになりそうです。